Don't allow me.
煙草



どんなに心の底から望んでも
それは決して戻っては来ないのです。

どんなに涙を流したとしても
それは決して戻っては来ないのです。

君さえいれば、何も要らなかった
君さえいれば、僕は幸せでした

戻って来ないと分かっていても
君に“さよなら”を言えないままいるー…




ーーーーーーーーーー…




「お疲れさまでしたー!」

響くその声に静かに顔をあげた。

ぞろぞろと動きを止めていた人間が
動き始めるのを
ただ、見つめていた。

「一宮さん、お疲れさまでした」

「……お疲れした」

次々とそんな言葉をかけられて
やっと、重たい腰をあげた。



ここは、都内にあるとあるスタジオ。
僕はこのスタジオで今まで仕事をしていた。

僕の職業は芸能人。
簡単に言えば歌手をしている。

路上でたまたま歌っていた時に
今の事務所の社長直々に
スカウトをされて、そのまま
あれよあれよと、歌手になっていた。

デビューして1年も経たない内に
俺の歌ったCDは爆発的に売れた




「和芭くん、次は取材だよ」

「はいはい」



コイツはマネージャーの柏木 彰(かしわぎ あきら)
まるで、小姑みたいなコイツは
いつも甲斐甲斐しく僕の世話をする。



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