Don't allow me.
簡単に身支度を済ませ
愛用のサングラスと帽子を深く被り
自分の部屋を後にした。
ポケットに入れていた
マナーモードの携帯が震えた。
発信者はさっきと同じ相手。
「はいはい、なんすか?」
『もう支度は終わった!?』
「いま、駅に向かってますよ~」
『じゃぁ、駅まで迎えにいくから!!』
「いらないよ、迎えなんて」
『遅刻ギリギリなんだよ!!駅で待ってなよ!!』
そう、言うが早いか
電話を勝手に切られた。
携帯をポケットにしまい
愛用の煙草に火を付けた。
深く息を吸い込み、静かに吐き出す。
(…生きてる…んだよなぁ…)
煙草を、吸って吐く度に
自分が呼吸していることを
思い知らされて、嫌悪感を抱く。
13年前のあの日から、
僕の心は半分なくなってしまった。
いや、無くしたんじゃない。
無情にも奪われてしまったんだ。
悪意のない、殺人者たちに…
奪われて…しまったんだ。