寄せ書きレター



メッセージを見た途端に、まるであの日にタイムスリップしたような感覚に陥った。



「…ふふっ。懐かしいわね、これ」



卒業式が終わったあと、嬉し涙を流しながら見た君からのメッセージは、あの日と変わらずそこで輝いているように見える。



急いで書いたのかして殴り書きみたいになっている陽介の文字が、とても懐かしさを感じさせた。



指先でそっとメッセージをなぞれば、気持ちはゆっくりと現代に帰ってくる。




「ねぇ、これ誰からの告白なの?どんな人?」



初々しい気持ちが急に蘇ってきて思わず笑いを零す私の隣りで、娘はこれを書いた人物を知りたくてうずうずしている。



どうやら、その正体にまだ気付いていないらしい。



「これを書いた人?それはね……」


「ただいまー!」


「あっ、お父さんおかえりなさい!」



まるで正体を明かそうとした私の言葉を遮るようなタイミングで、夫がリビングのドアを開けて入ってきた。



頬がほんのりとピンク色なのは、夜風に当たったせいだけではなさそうだ。



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