柾彦さまの恋
理解に苦しみながらも結子は、柾彦の態度で状況が読めてきた。
それから、ゆっくりと美月に目を留めた。
柾彦を頼ってきた美月がいじらしく思えた。
「まぁ、びっくり。そんなに泣いては、可愛いお顔が台無しですわ。
柾彦さんのことをこれほどに慕ってくださって、
母として嬉しいばかりです。
お父さまやお母さまが心配されてございましょうが、
折角いらしたのですから、ゆっくりお話をいたしましょう」
「母上、それは」
柾彦は、母の対応に驚いていた。
「柾彦さん、女性を泣かせるなんて殿方のなさる事ではございませんわ。
すぐに美月さんを追い返しても何も解決いたしません。
美月さんが落ち着くまで、いていただきましょう。
そうと決まれば、美味しいケーキを皆でいただきましょうね」
結子は、美月に優しく微笑むと椅子に座るように勧めて、台所へ向かった。
「おばさま、お手伝いをいたします」
祐里は、おはぎの重箱を抱えて、結子の後ろに続いた。