柾彦さまの恋
柾彦は、美月と結子の波長に巻き込まれたように感じていた。
六つ下の妹の志子(ゆきこ)は、美月と同い年で、この秋に嫁いだばかりだった。
志子(ゆきこ)を嫁に出して平気な顔をしていた結子だったが、
やはり淋しさを感じていたのだろうか。
好き嫌いをはっきりさせる結子が、即座に美月を追い返さなかったことを
不思議に思っていた。
結子は、あの祐里を抱きしめた日、
何も気付かないそぶりを見せながら、
やはり、自分の祐里への恋慕に気付いたのだろうか。
柾彦は、結子のこころの内を推量しながら、
今まで教授の娘としか認識していなかった美月を
女性として改めて見つめた。
不自由なく育ち、自己主張をしっかりと表現出きる女性。
そのような女性は、大学時代にいくらでもみてきた。
しかし、柾彦の求めている女性ではなかった。
「祐里さん、紫乃さんのおはぎですね。ありがとうございます。
それにしても、柾彦さんも隅におけませんね。
柾彦さんには、押しかけ女房がお似合いなのかもしれませんわ」
結子は、祐里から重箱を受け取り、笑顔を見せながら、居間の様子を覗う。