柾彦さまの恋

「婆や、ただいま帰りました」

優祐と祐雫が、石畳を駈けて学校から戻って来た。


「優坊ちゃま、祐嬢ちゃま、お帰りなさいませ」

 紫乃は、玄関前で二人を抱きしめた。


「婆や、今日のおやつは、何」

 優祐と祐雫が、同時に問いかけた。


「さぁ、何でございましょうね。

 お着替えをなされて手を洗われましたら、

食堂にいらしてくださいませ。

 それまでのお楽しみでございますよ」

「はい。婆や」

 優祐と祐雫が、同時に元気よく返事をする。


「祐里さまは、お留守でございますが、お二人で大丈夫でございますね」

 紫乃は、日本家屋に向かう優祐と祐雫の背中に伝えた。


 優祐と祐雫が生まれてから光祐と祐里は、日本家屋に移り住んでいたが、

平日の朝食から夕食までの時間は、ほとんど洋館で過ごしていた。


 紫乃は、あどけない二人から元気をもらう。

「はぁーい」

 優祐と祐雫は、着替えをするために日本家屋の玄関へ

競って走っていった。

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