柾彦さまの恋
夜になって、啓祐と光祐が一緒に帰って来た。
「ただいま」
「お帰りなさいませ」
車の音がすると同時に、家族が一斉に玄関に集まり、
声を揃えて啓祐と光祐を迎えた。
「美味しい匂いがしているね。紫乃、今夜の夕食は何だろうね」
啓祐が鞄を薫子に渡しながら、後ろに控える紫乃に問いかけた。
「本日は、旦那さまの好物にいたしました。
用意が出来ておりますので、食堂にいらしてくださいませ。
もちろん、デザートは、坊ちゃまの好物をご用意いたしております」
紫乃は、お屋敷の家族の一員であることで、こころが満ち足りて、
ただただしあわせだった。