柾彦さまの恋
告白
十二月に入り、桜山が薄っすらと雪化粧を施す頃となった。
柾彦は、都の学会に出かけ、檜室教授から呼び出しを受けた。
笙子との出合いで、柾彦は、すっかり美月のことを忘れていたし、
美月からも、その後、音沙汰がなかった。
柾彦は、重い気持ちで、教授室の扉を叩いた。
檜室教授は、扉を開け、柾彦を迎え入れた。
「鶴久君、久しぶりだね。
わざわざ、呼びたててすまなかった。とにかくかけなさい」
檜室教授は、柾彦に椅子をすすめて、自分も向かいの椅子に腰を
降ろした。
「ご無沙汰いたしております」
柾彦は、檜室教授の表情が穏やかなことを感じて取りあえずほっとする。
「先日は、娘の美月が迷惑をかけて、誠にすまなかった。
父親として詫びたいと思ってね。
見合いの席をすっぽかして、君を訪ねていたとは、
後から聞いて本当に驚いたよ」
檜室教授は、畏まって柾彦に頭を下げた。
「どうぞ頭をあげられてください。
私も突然、美月さんが訪ねて来られた時には驚きました。
その後、美月さんは、いかがでございますか」
柾彦は、恐縮して、教授に尋ねた。