柾彦さまの恋

「柾彦先生、そろそろ、お見合いでもされて、結婚なさいませんか」

 杏子は、突然、真面目な顔をして、柾彦に問いかけた。

「杏子は、結婚してしあわせそうだね」

 柾彦は、杏子の不意をついた言動に戸惑いながら、杏子のことへ話を振った。

「ええ、しあわせですよ。

 結婚してから徐々に築いていくしあわせもあるのですもの。

 柾彦先生は、あまりに真面目に考え過ぎていらっしゃるのですわ。

 一途ですものね」

 杏子は、意味ありげに『一途』を強調した。

「ただ結婚に縁がないだけだよ」

 柾彦は、慌てて訂正した。

「あら、杏子は、子どもの時からずっと柾彦先生が好きだったのに、

全然気付かずにどこかのお姫さまを一途に想っていたのは誰かしら」

 杏子は、挑戦的な瞳で、柾彦を見つめる。

「杏子は、ぼくのことが好きだったの」

 柾彦は、不思議な顔をして、杏子を見上げた。

 ずっと幼馴染として接していたので、考えたこともなかった。

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