柾彦さまの恋
桜の姫
祐里は、この年最後の鶴久病院での見舞いを終え、結子とお茶の時間を
過ごしていた。
「祐里さん、ようやく、柾彦も結婚に辿り着きそうでございます」
結子は、祐里に温かい紅茶を差し出しながら満足げに笑った。
「本当によろしゅうございました。
柾彦さまには、しあわせになっていただきとうございます」
祐里は、温かい紅茶の香りの中で、柾彦のしあわせを願っていた。
柾彦が笙子と交際していることを萌から聞かされて、
心から祝福の気持ちを抱いていた。
「これも、祐里さんのお陰でございますわ」
結子は、感謝の気持ちを込めて、祐里を見つめる。
「私は、何もいたしておりません。萌さまのご紹介でございましょう」
祐里は、謙虚に応じた。