冬色の後悔─大好きな、あなたへ─
そのまま、私はダッシュで伊織の部屋を出た。
もう、私は何がしたいのかわからなかった。
ただ思い出すのは、伊織の真剣な目と、唇に微かに残る温かさと感触だけ。
私の唇に触れた後の顔付き、私を抱き上げたときの手が、知らない人のようで。
小さい頃からずっと一緒で、ほんとのお兄ちゃんみたいな存在だった伊織。
今まで意識はしていなかったけど、伊織は、小さい頃の伊織とは程遠かった。
全てが『オトコノヒト』で。
そんな伊織を知るのが怖かった。
だから、私は伊織のココロをめちゃくちゃに傷つけてしまった。