幸福の時間へようこそ
「な、なあに」


「その、言いそびれちゃって、タカさんの二番煎じみたいなんですけど、その……」


「うん?」


「髪、切ったんですね。すっげー、似合ってます! 会った瞬間に思ったんですけど、恥ずかしくて、すぐに言えなくて……」


「ああ、ありがとう」


ほっそりとした首筋が見えそうなほど、短くした髪。
明るく染め直して、軽くパーマもかけた。


「大人っぽくて、綺麗って感じですよ!」


「ふふ、どうも」


悠一郎くらいの美系に、こんな風にストレートに褒められたら、ときめかない女の子はいないだろう。

花梨はそう思った。
それはとても客観的な感想だった。


――自分がもし悠一郎と同じ歳だったら?


そんなことを思いついて、慌てて打ち消す。


「でも、花梨さん……」


「どうしたの」


「そんなにバッサリ切るってことは、もしかして……」


「ああ、なるほど」


「あ、花梨さん、なに納得してるんですか。やっぱり、髪切った理由って……」


「違うわよー」


言いにくそうにモジモジしている悠一郎を、花梨は笑い飛ばした。


「違うんですか?」


「うん、失恋なんかしてないわ。第一、恋もしてないしね」


「そっかー、よかったー。あ、でも、恋してないってのは、ちょっとガッカリかも」


「なんで?」


「俺に恋してくれなきゃ、俺が困るんで」
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