幸福の時間へようこそ
「忘れてたわ」


「自分の誕生日なのに。25歳でしょ。四捨五入したらもう30じゃないですか」


「わたし、数学苦手なの」


「算数レベルですよ」


「遠い昔すぎて、記憶にないわ」


「四捨五入も忘れちゃったんですか」


「なんなの、ゆうくん。30、30って。おばさんだって言いたいの?」


花梨は怒ったそぶりを見せる。
もちろん、冗談めかして。


「違います。年齢なんて関係ないですよ。花梨さんは魅力的です。年齢なんて、産まれてからどれくら生き続けたか、ただそれだけの客観的な数字ですよ」


真顔の悠一郎。
思ってもみなかった返答に、花梨はうろたえる。


「だから……、」


悠一郎は続ける。


「年齢なんて関係なく、俺と恋、しません?」


「……けっきょく、そこに戻るのね、君」


「だって、花梨さんがまともに相手にしてくれないからー」


拗ねた素振りを見せる、悠一郎。


「いつも言ってると思うけど、いま、恋愛とかする気分じゃないの。全然」


緑色のペンのキャップを外しながら、花梨は肩をすくめて見せた。

それに……。

「好き」とか「付き合いたい」とか、こんなにも気軽に言えてしまう悠一郎は、なんだか信用しきれない部分がある。

無駄に凹ませても仕方がないので、本人には言わないけれど……。
< 12 / 12 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

36.0℃の熱帯金魚

総文字数/7,504

恋愛(その他)30ページ

表紙を見る
丹朱の橋、葉桜のころ

総文字数/3,958

恋愛(純愛)13ページ

表紙を見る
君と手をつなぐ話

総文字数/2,812

恋愛(純愛)13ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop