幸福の時間へようこそ
孝之はテキパキと指示を出す。


「ゆうくんはレジのとこに置いてある品をラッピングして。こないだ教えた通りにね。花梨ちゃんはポップをお願い」


接客時の、やわらかな物腰とは違う、パリっとした雰囲気。
スラリと伸びた背筋。
そこには、いつもどことなく艶っぽさが漂っている。

伸ばした口髭も、ざっくりとかき上げた前髪も、孝之によく似合う。


「ハー、なんか大人の余裕って感じですよね、タカさんて」


近くでラッピング作業をしている悠一郎が話しかけてきた。


「そうねー。まあ、ほら、ゆうくんよりも10以上歳が上だから」


花梨は、手元のポップカードを丁寧に扱いながら返事をする。

悠一郎も、赤や緑のリボンを使いながら、素早くラッピングをこなす。手先は器用な方なのだ。

プレゼントに手頃な小さな雑貨たちをラッピングして、大き目のカゴに詰め店内の目立つ場所に配置する。
そこに、花梨の書いたポップで彩りを添える。

それだけで、クリスマス気分は高まっていく。


「そっかぁ……、タカさんていくつでしたっけ」


「たしか、36……、だったかな」


「36か……」


物思いにふけるように、悠一郎はつぶやいた。


「大丈夫。そのくらいの歳になれば、ゆうくんだって大人っぽくなれるわよ」


「そ、そうですかね」


ちょっと照れた後、悠一郎は気が付いた。


「あ、それって、今はガキっぽいって言ってますね?!」


「ハタチなんだから、ガキで当然じゃない? むしろ、誇っていいと思うわ」


「ですかね……。あ、じゃあじゃあ!」


明るい声を出して、悠一郎はクルっとこちらを向いた。

花梨に投げかけられる、忠犬の瞳。
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