guard&search~幕末転生~
7人目・井上 源三郎の場合
トントントントン
夜も更け、今日はいい月が出ていた。
こういう日は何かいい事があるんだ。
小気味良く、葱を刻みながら誰もいない店内で一人笑ってしまう。
私は井上源三郎。
脱サラして、小料理屋『誠屋』を開いた。
小さいながら、好きな料理を作り、日々楽しく過ごす。
「…いや、楽しいふりかな…」
ふと、手を止め今までの人生を振り返ると、随分寂しいものだ。
何をしても、何かしら足りず、何時も寂しいと感じてしまう。
一度は結婚もしたが、やはり駄目だった。
離婚して、独り身になり趣味の料理をすることが、今唯一の人生だ…
「そう思うと、微妙だね…」
最近は、常連の原田君や、永倉君が飲みに来てくれる時だけが、懐かしく楽しい一時だ。
「今夜は…来ないかな?」