君へ
嫌な気分を紛らわすにはちょうど良い。
あたしは大きく深呼吸してピアノの弦に手を置いた。
――ポローン
どこまでも澄んでいる音色が音楽室に響き渡る。
この音を聴いているとひどく安心できる。
神経をピアノに集中させている時、
「ノクターン?上手なんだね。」
「…だれ?」
聞こえてきた低い声に警戒しながら振り返る。
呆然とした。
金髪の髪が、その整った顔によく似合っている。肌は、ニキビ一つなく、男のくせして白くてすべすべ。
その、真っ黒な瞳に吸い込まれそうになり、思わず目を反らした。
「いつもここにいんの?」
「……あんたには関係ないでしょ」
「ははっ冷たいなあ」
クスクス笑う目の前の男。
ゾクッと鳥肌がたった。
……なにこれ
その男が放つオーラに圧倒される。