落ちこぼれの恋愛事情。
「あれ、彩夏さん、
この表、1列ずつずれていますよ?」
桑原に声をかけられたのは、退社予定時刻の間近だった。
「…え?」
「ほら、ここ。
そのせいで計算も間違っているみたいです…」
あ、と間抜けな声が出る。
私は表計算ソフトの入力をミスしていた。
注意深くやれば、するはずのないミス。
頭の中に缶コーヒーのコトが残っていた。
私は自分の注意力散漫を激しく後悔していた。
今から直そうとするならば、今日は残業だ。
「大丈夫ですか?」
心配そうに覗きこむ桑原に、
なんとか「大丈夫」と返し、私は間違えた列を全て消した。
大丈夫、やれる。
そうして自分を奮い立たせた。
…高木がこっちを見ているのに、私は気づいていなかった。