揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「野島君が……?」


今までそんな素振りを見せていなかったのか、彼女はホントに初耳のようだった。


「あぁ。雅志、篠原さんの事本気で好きみたいだから」


「……だから?だから何?私に、野島君とつき合えって言うの!?」


大きな目を潤ませながら、彼女は鬼気迫る表情で俺を見上げてくる。

そんな彼女に対して、俺はそれ以上言葉が続かなかった。


「さっき、神崎君が好きだって言ったじゃんっ。なのに、野島君の事言われたって、私はつき合えないよっっ」


そう言って勢いよく体の向きを変え、彼女は階段を降りて行こうとした。


だけど、狭い踊り場だったから。

彼女はバランスを崩して、そのまま頭から階段を落ちて行きそうになり。


咄嗟に手を伸ばして、彼女の左肩を掴んだけれど……。


時既に遅しで、俺の体も彼女と共に宙に舞った。


彼女の下敷きになる格好で何段か階段に背中をぶつけながら、2階の昇り口で落下が止まった。

堅い床に思い切り頭と背中を打ち付け、全身に痛みが走る。


「ちょっとやだっ!」


「篠原さんと、神崎君じゃない!?」


どこかから女子の声がするけれど、なんだか意識が遠のいていくような気がして。

必死に目を開けようとするものの、クラクラして思うように開けない。


「大翔っ!?」


意識を手放してしまう間際に聞こえたのは、何となく梨香の声に似ていた気がした……。
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