揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「心配したんだからぁっ!」


そう言う梨香の目から、涙が零れ落ちた。

くしゃくしゃな笑顔を俺に向けながら、大粒の涙を次々と落としていく。


「神崎っ、気がついたかっ!?」


続いて、男性の声が聞こえたかと思ったら。

担任であり監督である鈴木先生が、ふっと視界に入ってきた。


いつも気丈な先生までもが、今にも泣き出しそうな顔をして俺を見ている。


「ここって……?」


視線を、少し周りに移してみる。


無機質な感じの白の空間の中で、天井に付けられたカーテンレールに何だか見覚えがあって。

どうやら病院にいるらしいという事は、何となく分かった。


「階段から落ちたの、憶えてるかっ?」


必死な形相で尋ねてくる先生の言葉で、俺はある場面を思い出していた。


俺が篠原さんを踊り場に呼び出して。

雅志の気持ちを伝えたけれど、反対に俺の事を好きだと言われて……。


「彼女は……?」


駆け出してバランスを崩した彼女を慌てて掴んだけど。

間にあわなくて、一緒に落ちたんだよな……?
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