揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「何らかの衝撃を受けて、記憶があやふやなんだってさ。たぶん落ちる間際に俺といたから、そうインプットされたんじゃないか、って」


『一時的なものだと思うから』と続けた医者は、あろう事か…俺にそれにつき合ってやってくれと言ってきた。

彼女が困惑して心を閉ざしてしまわないように、話を合わせてやって欲しいと。


そして、彼女の両親にも…頭を下げられてしまった。

自分達の事も分かってもらえない今、頼れるのは俺しかいないんだと言われて。


「梨香ちゃんとは別れたんだから、つき合ってあげたらいいじゃない。可愛い子だし」


そう言ってにっこり微笑むまどかさんは、どこか嬉しそうで。


それは、きっと。

篠原さんとつき合う事で、俺が由佳と距離を取るんじゃないかって思ってるからなんだろう。


俺が篠原さんを好きになる事は無い、って分かってるから……。


「彼女があんな風になったのは、大翔にも責任はあるわけでしょ?男なら、ちゃんと責任取らなきゃ」


確かに、まどかさんの言ってるのは正論だ。


だけど、彼女の意図が明らかに別の所にあるって見え見えで。

素直に頷けない。


「とりあえず、会計済ませてくるから。そしたら、帰る支度しましょ」


そう言うと、まどかさんは鞄を持って病室を出て行った。


病院は、とりあえず退院の許可を出してくれた。

ただ、今日・明日にでも最寄りの病院へ紹介状を持って行く事を条件で。


篠原さんは頭を打っているみたいなので、もう一日ここに残るらしい。


「もう、帰るの?」


救急外来のここには、ベッドが幾つか並んでいる。


その中で俺と篠原さんは隣同士で。

カーテンさえ開いていれば、話しをするのは容易かった。
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