揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「そういえば、前にお会いしましたね」


そう言った彼女の色白で綺麗な顔は、笑顔を取り戻していた。

綺麗というに相応しい整った顔立ちが、笑顔によって一層華やかさを増す。


「こ、こんにちは」


苦しくなる思いを隠しながら、私は軽く頭を下げて挨拶をした。

ちらっと大翔君に視線を送るものの、彼はこっちを見てくれない。


「コンビニ、つき合うよ」


話題を変えるように、大翔君がお母さんにそう声をかけた。

お母さんの視線も、つられて彼へと戻される。


「ホント?実はたくさん買う物あるから、1人で持てるか不安だったの」


お父さんがいなくて、お母さんと2人暮らしだって言ってたから。

きっと、心配掛けたくないのかもしれない。


だって、私を自分の彼女だって紹介する気は。

残念だけど、今の彼からは見られないから。


「じゃ、じゃあ私はこれでっ」


いたたまれなくなった私は。

言い逃げするかのように、自分の家へと向かって走り出した。


後で、メールで謝ろう。


そう考えながら、私は振り返る事なく走り続けた。
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