揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「彼女は、これ見て何て言ってた?」


ホントのところは、そんな事聞きたくはなかった。


だけど、それを知っておかないと。

これから先、どうしていいのかが分からない。


「言ってもいいけど、怒らない?」


焦らされるような言葉に、更にイラッとしてくる。


そんな俺の反応を楽しんでいるかのような、まどかさん。


そんな彼女を、信じていいものか分からないけれど。

彼女から聞くしかないから。


「……怒らないよ」


ぐっと右の拳を強く握りながら、そう答える。

爪が手の平に食い込むくらいに、強く強く。


「彼女ね、大翔の事を『最低!』って言ってたわ。母親とデキてる小学生なんてあり得ないって。せっかく、恋バナしようと思ってこっそり教えたのにね」


わざとらしく肩を落とす継母の前で、俺は本気で肩を落としていた。

『最低』って言葉が、ひどく胸に突き刺さる。


「今度は、もっと親身になってくれる人を探さなきゃ。さっ、コーヒーできたみたいだし飲みましょ?」


そして鼻歌交じりに、彼女はキッチンへと足を向かわせ。

その後ろ姿を見送りながら、俺はただ項垂れる事しかできなかった。


由佳が俺を軽蔑してしまうのも、無理はない。

誰だって、この事を知ったら…同じ反応をするだろうし。


だったらせめて、訳を伝えたい。

俺が…何でこんな生活をしてるのかって事を。


そう考えたら、今すぐにでも由佳の元に向かいたくなってきた。

でも、もちろんまだ彼女は学校だろうし。


それに、俺と会ってくれるかどうかも分からない。


でも……。


俺は、思い立ってソファから腰を上げていた。

何事かと、まどかさんが慌てて振り返る。


「……トイレだよ」


それだけ告げると、俺はリビングを出た。

そのまま、言った通りにトイレに入る。


だけどそれは…由佳にメールをする為だった。
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