揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「大翔と篠原さんが階段から落ちてきた時に、たまたまいたんだってさ。先生と一緒に病院についてったらしいよ」


「そうなんだ……」


水沢はまだ大翔君の事を好きなんだろうか?

カムフラージュにされてたなんて、きっと彼女は知らないよね。


そう考えると何だか切なくなってくる。

利用されてたって知らずに、元彼を心配して付き添ってあげただなんて。


彼女は今までちょっと苦手だったんだけど。

何だか他人事じゃないような、そんな気がしてきた。


「2人とも病院に運ばれた時は意識が無かったらしいけど、大翔が先に気がついてさ。左の手首を痛めたみたいで、しばらく野球は無理だろうって」


「えっ……?」


さっき会った時は詳しくケガの話を聞けなかったけど。

まさか、野球ができないぐらいにひどかっただなんて……。


野球をする為に。

甲子園に行く為に。


その為に、彼は好きでもないまどかさんと関係を持ってるんだって言ってたのに。

その野球ができないなんて、あんまりだよ。


「でも、そんなにひどそうには見えなかったよ?」


会ってた時は痛そうに見えなかったし。

もしかしたら、実は大した事ない…とか?


「アイツが姉ちゃんに弱音吐くわけねぇじゃん。骨折してたって、痛いなんて言わねぇよ」


さすがに親友なだけあって、克也は大翔君をよく分かってるらしい。

確かに、素直に「痛い」なんて言わないんだろうね彼は。
< 242 / 337 >

この作品をシェア

pagetop