揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
しがらみを乗り越える為に-side大翔-

chapter29

朝一番で診察してもらった、整形外科。


とりあえず、骨折まではいってなかったものの。

手首を固定され、2週間は野球を禁止するようきつく言われてしまった。


トーナメント戦の県大会だから。

今日の試合に負ければ、そこで終わってしまう。


2週間か……。


うちが順調に勝ち上がっていれば、準決勝か決勝の頃。

それまでは、ベンチで応援する事しかできない。


「何やってんだよ、俺……」


包帯でぐるぐる巻きにされた手首を見ながら、思わずぼやいてしまう。

みんなで全国行く為に頑張ってきたんじゃないのかよ?


「焦ったって仕方ないじゃない。ほら、新幹線着いたみたいよ」


隣にいたまどかさんは、そう言って改札の中に設置されている電光掲示板を指差した。


ここは、地元の最寄り駅。

在来線と新幹線の駅が併設されていて、今は新幹線の方の改札前にまどかさんと立っている。


まどかさんの言ってる列車に乗ってるのは……。


「大翔!」


上階にあるホームからエスカレーターで降りて来る乗客達の中から、まだ幼い感じの女性の声が聞こえてきた。

視線を向けると、こっちに向かって手を振る篠原さんの姿が見える。


「ほらっ、手振ってあげなさいよ」


冷やかしっぽく言うと、まどかさんは俺の肩をポンッと叩いてきた。


もちろん、手なんて振るつもりは無くて。

ただ、彼女がこっちへ向かって来るのを目で追うだけだった。
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