揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「おかえりなさい、千花ちゃん」


改札を出た彼女に、まどかさんがそう声を掛ける。

篠原さんの後ろから、彼女のお母さんと保健の本田先生がついて来ていた。


「ただいま」


照れくさそうにそう言葉を返すと、彼女は今度は俺へと視線を移してきて。

何だか嬉しそうな顔を見る限り、ケガは大したこと無さそうで少しほっとした。


「わざわざ、すみませんでした」


篠原さんの母親は、そう言って深々と俺達に頭を下げてきた。

手に持つ大きな鞄は、きっと篠原さんの荷物なんだろう。


散々な修学旅行になっちゃったよな、彼女も。


その荷物を見ると、昨日まで修学旅行だったんだという事が思い出されて。

忘れかけていた罪悪感がまた蘇って来る。


「来てくれて良かった」


そう言って微笑む彼女の顔を見ると、胸が苦しくなってくる。

この罪悪感は篠原さんへのモノなのだろうか?


それとも……?


「昨夜は遅くに電話してごめんね」


「別に大丈夫だよ。起きてたし」


昨夜の10時を過ぎた頃。

彼女は、俺の携帯に電話を掛けてきた。


なかなか寝付けないという彼女が、なんだかすごく寂しそうで。

どうしても突き放す事ができなかったんだ。
< 247 / 337 >

この作品をシェア

pagetop