揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
俺達は試合会場となる別の市へ在来線で向かうので、本田先生達とはそこで別れることになった。


「私に遠慮せずに、手繋いでいいのよ」


まるで理解のある母親のように言うまどかさんに吐き気を感じながらも、俺はとりあえず篠原さんの反応を窺い。

そんな彼女は、素直に左手を差し出してきた。


由佳だったら、自分から手を出してきたりはしない。

恥ずかしいのか、年上としてのプライドがあるのか。


いつも、俺が差し出した手を恥ずかしそうに握ってくる。


まぁ梨香だったら、何も言わずに向こうから腕を絡めて来るんだけどさ。


「ほら大翔、女の子に恥かかせちゃダメよ」


そう言ってまどかさんは、俺の腕を肘でコツンと突いてくる。

仕方なく、俺は篠原さんの手を取った。


由佳よりも小さくて冷たい感じのする手を握ると、体中に違和感が生じてきて。


俺の手が、頭が、心が。

これは愛する人の手じゃないと訴えている。


「応援に行くって言ったはいいけど、ホントは不安なんだ。だって、同じ学校の子だって言われても分かるか自信がないし」


そう呟く彼女は、少し不安げで。

俺は握る手に少し力を入れた。


「大丈夫だよ。俺が…いるし」


「……ありがと、大翔」


そんな俺らの後ろを歩くまどかさんが、静かにほくそ笑んでいる事などもちろん知る由も無く。

俺は複雑な気持ちを抱えたまま、試合会場へと向かった。
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