揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
在来線で30分ぐらいの所にある駅で降り、そこから試合会場のグランドまではそんなに歩く事なく着いた。


大きな公園の中の一角にある、野球場。

そこで、うちのチームの県大会の初戦が行われる。


「試合は1時からよね?その前にお昼でも食べる?」


まどかさんが指差したのは、野球場に隣接するスポーツセンターの建物。

入口にカフェの看板が出ている。


公園の大きな時計に目をやれば、12時少し前で。

俺達は彼女の意見に従う事にした。


「大翔ー!」


その建物に向かう途中、背後から大きな声で名前を呼ばれ。

振り向くと、野球場の入口辺りにうちのチームのユニフォームを着た集団がいた。


「応援来てくれたのかー?」


俺を呼び止めた克也を先頭に、皆がこっちに向かって来てくれる。

それと同時に、篠原さんが俺の背後へと…身を隠すように回り込んだ。


「悪かったな、試合出れなくて」


そう言って、俺は包帯の巻かれた左手をアイツらに向けた。

何とも言えない複雑な表情で、皆が俺の左手に視線を注ぐ。


「とりあえず、大翔が治るまでは俺らがちゃんと勝ち進んどくからさ」


そう言って、克也は俺に笑顔を向け。

そのまま、俺の後ろで様子を窺っている篠原さんをチラッと覗きこんだ。


「篠原さん、俺のコト分かる?去年一緒のクラスだった吉野だけど」


彼女にも笑顔を向けるものの、もちろん篠原さんは首を横に振るだけで。

怯えるように、俺の背中にしがみついている。
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