揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「そう…ですか」


由佳のその辛そうな表情を見ていると、今すぐにでも抱きしめてやりたくて。

それができない自分がめちゃくちゃ歯痒くて仕方ない。


好きな女が目の前で苦しんでるのに、ただ見てるだけしかできないなんて。


「千花ちゃん、こちらさっき声を掛けてきた吉野克也君のお姉さんで由佳さん。大翔もいろいろお世話になってるみたいなの」


わざとらしいその言い方にいらつきながらも、何も言えなくて。

俺は黙ったまま、笑みを漏らしているまどかさんを睨みつけた。


「さっきの吉野君のお姉さんですか。大翔がお世話になってるみたいで、ありがとうございます」


そう言って、何も分かっていない篠原さんは由佳に頭を下げた。

そんな彼女から、由佳はそっと目を逸らしている。


俺には、由佳が今涙を堪えてるんだって事が手に取るように分かる。


「ほら、昼…食いに行くんだろ?」


早く由佳をこの場から解放してやりたくて、俺はまどかさんに声を掛けた。

苛立ってる俺を楽しんでるのか、微笑を浮かべながら彼女は俺を見ている。


「そんなに慌てなくてもいいのに」


「試合の時間もあるしさ。ほら、雅志も早く戻った方がいいぞ」


張りつめた空気を感じるのか、雅志はさっきからずっと黙っていて。

俺の言葉に、やっと我に返ったようだった。


「あ、あぁ」


「俺の分も頑張ってくれよ」


アイツの背中を軽く叩き、俺は雅志と共に歩き出した。

篠原さんも後ろをついて来る。


だけど……。
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