揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「別に、メジャーリーガーになりたいわけじゃないし。甲子園に行くのが目標なんだから」


「じゃあ、高校生になったら戻って来ればいいじゃない」


名案でも浮かんだかのような言い方で、まどかさんはそう告げてくる。

あくまでも、ニューヨークに俺を連れて行こうとしているらしい。


「ここで俺が断ったら、由佳さん達がどこかに飛ばされるわけ?」


俺がニューヨークに行かなかったら、由佳の親父さんがどこかに左遷される。

そんなの、まどかさんが父親に頼めば…訳も無い話なんだろう。


「ホント、大翔は頭が良くて助かるわ」


そう言って笑うと、彼女は自分のカップに口を付ける。


俺は項垂れてしまっていた。

どっちに転んだって、由佳と引き離されるのは確定で。


だとしたら、由佳にできるだけ迷惑をかけたくない。


「いつ…行くつもり?」


好きな人と一緒にいる事が叶わないのならば。

せめて、その人を守ってやりたい。


俺がニューヨークに行く事で、由佳達に迷惑がかからないのだとしたら。


「ホントは、今すぐにでも行きたいぐらいなんだけど。実はね、篠原さんも近いうちにニューヨークに転勤するんですって。最初は何も思わなかったんだけど、よく考えたらその手があったなぁって」


「篠原さんも……?」


「あっ、それはホントにたまたまだからね。転勤するまでの間、大翔に恋人のフリをして欲しいって言われたんだけど…私達も行くなら続けられるわね」
< 261 / 337 >

この作品をシェア

pagetop