揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「用?俺に?」


不思議そうに訊き返す元カレに、俺は黙ったまま頷いて見せた。


そう。

今日俺は、この人と話をする為にここへ足を運んだのだから。


「分かった、いいよ。あそこのベンチにでも座る?」


そう言って彼が指差したのは、体育館横の中庭らしき所にあるベンチ。

辺りに人はいなさそうで、話をするにはちょうど良さそうだった。


「篠原さん、悪いけど2人で話してきてもいいかな?」


隣に立つ彼女を見下ろし、そう尋ねた。

ここまで連れて来ておいて申し訳ないんだけど。


「あ、うん……」


彼女が不安そうな顔をすると同時に、


「良かったら、ジュースでもどう?あっちの購買に自販機あるから奢るよ」


そう声を掛けてくれる人がいた。


その人は、諒斗ではなくて。

制服を着ていない…知らない男だった。


「ほらっ、諒斗も行くぞ。じゃあ、ゆっくり話して来いよ」


「あ、はい。すいません、弘登先輩」


頭を下げる元カレに軽く手を挙げると。

その“弘登先輩”と呼ばれた人は、諒斗と篠原さんを連れて校舎の方へと向かって行った。
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