揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「お前ってさぁ、ほんっとバカだよな」


20センチぐらい上から放たれる、呆れたような声。

だけどどうしてだか、怒られているような気がしなかった。


それはきっと、諒斗の顔がすごく辛そうだったからかもしれない。


「そんな思いしてまで、アイツがいいのかよ?」


そう言って、諒斗は私の両肩の横に手を伸ばしてきて。

壁と自分の体で私を挟んでしまった。


「りょ、諒斗……?」


2人の距離が一気に近くなり、私は驚いてアイツを見上げた。


間近にある諒斗の顔はいつになく真剣で。

冗談でこんな事してるんじゃないって思えてきた。


「お前が幸せになってくれるんだったら。そう思って、俺はお前を諦めたんだよ。じゃなきゃ、誰があんな小学生に任せるかよ。なのに、結果がこれか?全然幸せになってねぇじゃん!」


少しでも動いたら諒斗に触れてしまいそうな距離。

アイツの息づかいがすぐそばで感じられ、思わず顔をそむけてしまった。


襲われた時の恐怖が完全に消えたわけじゃない。

友達に戻ったつもりでも、どこかで諒斗を男として意識している自分がいる。


「お前が辛そうにしてるのを、俺は黙って見てなきゃいけねぇのかよ?俺が幸せにしてやりたいって、思っちゃいけねぇのかよっ!?」


荒ぶった諒斗の声を聞きながら、私は心の中で何か引っ掛かっていた。


全然幸せになってない?


大翔君とつき合いだしてから、私は幸せじゃなかったの?
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