揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦

chapter34

大翔君の家に行く約束は、夕方の5時。


とりあえず、放課後になった今。


駅前の本屋さんで時間でも潰そうか、なんて思いながら正門へと向かって歩いていると。

向こうから見知った顔が近付いて来た。


「先輩」


それは、黒のTシャツにジーンズという私服姿の弘登先輩で。

白い夏服を着て下校する生徒達の中で、その姿はかなり目を引いていた。


「あぁ、由佳ちゃん」


私に気付くと、先輩はいつもの明るい笑顔を浮かべて軽く手を挙げ。

そのまま、私の元へと歩いて来た。


「今、帰り?」


「あ、はい。今日もバスケ部見に来たんですか?」


ごく普通な流れで尋ねたつもりだったけれど、先輩の表情は一瞬曇り。

少し困ったような笑顔を返してきた。


「今日は、真吾とデート…かな。じゃあ、またね」


急いでいたのか、先輩はそそくさと昇降口へと向かって行ってしまった。

その後ろ姿は、いつもとちょっと違うように見えて。


真吾と何かあったのかな?


そんな風に思いながら、とりあえず正門へと向かった。
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