揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
じっと篠原さんの反応を窺っている水沢と。

彼女の言葉に顔を俯かせ、何やら怯えているような様子の篠原さん。


篠原さんの様子がさっきから変な気がした。

元カノにいろいろと言われて、怯えてるんだろうか?


それとも……?


「分かる?大翔の彼女は由佳さんなの。あんたが後から入る隙なんて無いのよ。記憶を失くしたフリしたって、大翔はあんたを好きになんてならないんだからっ」


えっ?

記憶を失くしたフリ……?


「……どういう事だよ?梨香」


水沢の言葉に反応したのは私だけじゃなかった。

篠原さんの隣に立っていた大翔君が、慌ててこっちに向かって来る。


「今日、たまたまトイレで聞いちゃったのよ。この子が、あんたのクラスの近藤うららに話してるのを。ニューヨークに行く事になったっていうのと、大翔のそばにいたいから記憶が無いフリをしてるんだって事を」


怒りを含んだ水沢の言葉が、どうしても信じられなかった。


大翔君のそばにいたいから、記憶喪失のフリをしてるっていうの……?

だって、親も先生も分からないんだって言ってたよね?


そこまでして、大翔君の彼女でいたかったの?


改めて篠原さんの方を見ると、大翔君に知られて気まずいのか顔を俯かせたままで。

黙ったまま、肩を小刻みに震わせていた。
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