揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
彼の私を見る目は、どこか後ろめたさがあるように思えて。

それはもしかしたら、ニューヨークと関係があるってことなんだろうか?


「篠原さんとニューヨークに行くの?」


もう一度、水沢が尋ねた。

怒っているような、それでいてどこか悲しそうな。


彼女もきっと、今の私と同じ気持ちなんだろう。


「行かないよ」って言って欲しいんだ。


「ニューヨークへ行くのは…本当だよ」


だけど、彼の答えは違っていた。

私と水沢から視線を外し、どこか悔しそうな顔でそう答えたんだ。


「でもっ、篠原さんの記憶は戻ってるんだからさ。大翔が一緒に行く必要はないよね?」


水沢は、記憶をとうに取り戻していた篠原さんから事情を聞いているから。

だから、この話の展開にもついていけてるんだけど。


私は既に話から取り残されている状態で。

何がどうなっているのか、まだ良く分かっていない。


ホントは、もっと大翔君に訊きたい事がたくさんあるのに。

ただただ、こうやってみんなの話を聞く事しかできないんだ。


「とりあえず、千花ちゃん」


今まで座っていたまどかさんは、そう言うとすっと立ち上がり。

涙を流し続けている篠原さんの元へと向かった。
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