揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「ニューヨークに行くのは、大翔の野球の為でもあるのよ」


ふんっ、と鼻であしらうかのように言うと。

まどかさんは、大翔君の体を後ろからそっと抱きしめた。


まるで恋人同士かの様な図に、私の胸がズキンと痛む。


「甲子園に行く為に、野球の本場で勉強するの。私のエゴでも何でもないわ」


そう言って、大翔君の右頬に自分の左頬を当てる。

だけど、そんな彼女を大翔君は振り払おうとはしない。


まどかさんに養ってもらう為に、彼女のいいなりにならなくちゃいけない彼。

大翔君の立場が分かるだけに、見ているのが辛い。


でも、だからこそ。

水沢がやってくれたみたいに、周りが助けなくちゃいけないんだ。


「あなたのエゴだと思います」


ここで諦めたら、きっと一生後悔する。


「親という立場を利用して、大翔君を縛りつけたいだけなんですよ」


まどかさんから大翔君を解放してあげたい。


「彼の気持ちを尊重してあげて下さい。あなたの人形じゃないんですっ」


普通の小学生として、みんなと同じように生きていかせてあげたい。


「大翔君を自由にしてあげて下さい!」


その為に私ができる事は、こんな事ぐらいしかないけれど。

彼の苦しんでいる思いを代わりにまどかさんにぶつけてやりたい!
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