揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
みんなの視線が先輩へと集まる中、もう一度彼は口を開く。


「たくさんの人達を巻き込んで、犠牲にして。それであんたは満足するの?」


真っ直ぐに射るような視線が、まどかさんをしっかりと捕え。

彼女は少し怯んだような表情を見せた。


「えぇ、満足よ。だって、元々私と大翔は幸せだったんだもの。それを皆が邪魔してくるんじゃないのっ」


先輩の威圧感に負けないように、精一杯彼女は虚勢を張って答える。

だけど弘登先輩は、じっと彼女を見つめたままでいた。


まるで、まどかさんの心の奥まで見ようとしているかのように。


「それは、あんたが満足してるだけだろ?こいつは全然幸せなんかじゃねぇよ」


そう言って、先輩は大翔君を指差した。


先輩も真吾からいろいろ聞いたんだろうか?

それで、こうやって大翔君を助けようとしてくれて……。


「家庭の事情に、これ以上口を挟まないで。早く由佳さんを連れて帰ってくれない?」


そう言って、犬でも追い払うかのように手で≪いなくなれ≫とジェスチャーをすると。

弘登先輩は彼女の元に歩み寄り、ガシッとその払った右の手首を掴んだ。


「相変わらず、自分の事しか考えられないんだな?」


その言葉に皆が反応した。

だってそれは…まるで、知り合いみたいな言い方だから。


知り合い……?


急に胸騒ぎがして、私の鼓動のスピードがどんどんと上がっていく。


もしかして、という気持ちと。

まさか、っていう気持ち。


それらがあいまって、私の心を落ち着かなくさせる。
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