揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
この前、私が先輩と過ちを犯してしまいそうだった日。


先輩が話してくれた、忘れられないという人。

年の離れたお兄さんの彼女だった人。


それが…まどかさんだっただなんて。


「兄貴と俺を捨てて、大切な人と結婚するって聞いたけど。その結末がこれなのかよ?」


先輩の少し茶色がかった瞳が、昔愛した人を真っ直ぐに捕えている。

6年ぶりに会えた彼女の現状を見て、悲しげに潤んでいる。


「違っ……」


あんなに強気だった彼女が、言葉を出せないでいた。

目の前にいるのが昔関係していた男だと分かり、明らかに動揺している。


「そういや、兄貴とは関係続けてるんだって?お互い既婚者なのに、よくやるよな」


軽蔑するかのように言い放ち、先輩は掴んでいた手を離した。

掴まれていた手首を擦りながら、まどかさんは先輩から視線を外していく。


「悠也とは、こっちに戻った時にバッタリ会ったの」


ぽつり、とまどかさんは口を開くものの。

それでもまだ、先輩の方を見ようとはしなかった。


「俺らを捨てて、ここを出てったんだろ?なのに、何で戻って来たんだよ?」


「……」


「俺も兄貴も捨てて、勝手にいなくなって。それで今度は義理の息子と関係を持っておいて、兄貴とヨリを戻して。何だよそれ?結局、あんたは誰でも良かったのかよ?」


「……弘登の事が忘れられなかったの」


「はっ?」


「私はこの6年間、小島弘登の面影を追ってたのよっ!」


彼女のその言葉に。

ここにいる皆が…一瞬、耳を疑った。
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