揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「……そんな調子のいい話、俺が信じるわけないだろ?」


しばらく続いた沈黙を破ったのは弘登先輩だった。

厳しかった顔つきが、少し戸惑いの色を隠せないでいる。


「私は、悠也なんかじゃなくてあなたを好きだったの」


“悠也”っていうのが、きっと先輩のお兄さんの名前なんだろうけど。


でも、その人より弘登先輩の方が好きだったの?

6年前って言ったら、先輩は中1ぐらいだよね?


「悠也ってさぁ、この間スタバの前で会った奴?」


そう尋ねたのは大翔君で。

彼の口から“スタバ”という言葉が出た事にドキッとしてしまった。


私が臨時のバイトをした事は話してないし。

その日に弘登先輩と再会した事も話してない。


「えぇ、そうよ。彼が、この弘登のお兄さんの悠也。6年前に…私が大学生の時につき合ってた人よ」


少しずつ明かされていく、まどかさんの過去。

弘登先輩とそのお兄さんとの過去。


そこに…大翔君を救える何かがあるんじゃないだろうか?


先輩には悪いけど、そう思ってしまった。


「その時、たまたま俺はスタバにいたんだよ」


突然の告白に、まどかさんと大翔君が先輩を見上げる。

その少し離れた所で、私は1人心を落ち着かなくさせながら3人を見ていた。
< 311 / 337 >

この作品をシェア

pagetop