揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「そうか。あの時はてっきり弟だと思ってたけど、君だったんだな」


すまなそうな声で先輩はそう呟き。

私はというと、大翔君にいつ声をかけられるかとびくびくしながら聞いていた。


「由佳をナンパしようとしたのは、腹いせか何かなわけ?」


「腹いせか……。まぁ、そんな感じだよな。まどかに捨てられたあの日から、俺は女なんて信じられなくなってたし」


呆れたような口調で自嘲する先輩。

その眼差しは、大翔君ではなくまどかさんへと向けられていた。


「捨てたくて…捨てたんじゃない」


さっきまでの強気な彼女とは違う。

弱々しくて、不安そうで。


6年前の自分に…戻っているのだろうか?


「大学3年だった私は、同じサークルだった悠也とつき合ってた。でも、初めて弘登を見た時…すごく運命を感じたの。一目惚れだったのよっ」


潤んだ瞳のまま先輩を見つめるまどかさんは、たぶん6年前の先輩を思い出していて。

その表情からは、何とも言えない懐かしさが窺えた。


「あなたも私に好意を抱いてくれてるって分かった時は、すごく嬉しくて。8歳の歳の差なんて全然気にならなかったわ」


「じゃあ、何でっ?」


「……お母様にバレたからよ」


消えてしまいそうなぐらいの、か細い声。

この人が本当にあの“まどかさん”なのかと疑いたくなる。


「母さんに?何が?」


「あなたと…関係を持ってしまった事をよ」
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