揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「小島弘登っていう男を忘れられなかった私に、神様が与えてくれた贈り物だと思ったの。弘登の代わりに、この子を愛していこうって思ったわ。だから、神崎主任に近付いて彼と再婚して…こうして母親になったのよ」


我が息子が可愛いから、あんな事をスるんだと思ってた。

でも本当は…大翔君に先輩を重ねてたの?


忘れられない相手を、血の繋がらない息子に重ねていただけだっていうのっ?


「だからって、自分の報われない想いを彼にぶつけていいわけじゃない」


そう口を開いたのは、ずっと黙っていた真吾だった。

意志の強そうな目で、今にも泣き出してしまいそうなまどかさんを真っ直ぐに見ている。


「彼はあなたの人形じゃない。ましてや、あなたが産んだ子供でもない。あなたに彼を縛り付ける権利はないんだ」


「でも…それでも、私は大翔の母親なのよっ」


「母親に交際を認められなかった辛さは、あなたが一番よく分かってるんじゃないですか?」


真吾のその言葉は、まどかさんの心の奥に確実に届いたようで。

はっとした顔を見せた彼女は、そのまま黙って顔を俯かせてしまった。


弘登先輩との交際を認めてくれなかった先輩の母親と、私と大翔君の交際を認めてくれないまどかさん。


自分も同じ事をしているのだと、真吾が気付かせてくれたんだ。


「なぁ、まどか。もう…やり直せないのかな?俺達」


先輩の優しい声に、ゆっくりとまどかさんの顔が上がっていく。

悲しみに包まれていた彼女は、突然の言葉に戸惑いを隠せずにいる。


「俺も、ずっと忘れられなかったんだよ。ずっとまどかの代わりを探してたんだ」


初恋の人を思い続け、いろいろな女性と関係を持ってきた先輩と。

本気で好きになった人を思い続け、義理の息子にその面影を映してきたまどかさん。


今の私は…この2人のしてきた事を責める気にはなれない。
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