揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「だって、私はあなたを捨てたのよっ?」


「構わないよ、もう一度やり直せるのなら。これからはさ、コイツじゃなくて俺を見てよ?」


そう言って、大翔君の左肩に右手を添えた先輩。

そんな2人を見返しているまどかさんは、溜めていた涙の粒を頬に滑らせていた。


でも、決して悲しそうなわけじゃない。

嬉しさと後ろめたさの入り混じった、そんなような複雑な表情。


「……お母様にまた反対されたら?」


「そん時はさ、ここに居候させて?」


6年前とは違う。

そんな気持ちのこもった、眩しい先輩の笑顔。


「後悔しても知らないから」


「6年間、後悔しっぱなしだったんだよ。まどかといられるなら、俺は何も後悔しないから」


「ほんっと、バカなんだからっ」


涙ながらにそう呟くと、まどかさんは先輩の元に歩み寄り。

そのまま、彼の胸に体を預けた。


「悪いけど、君のお母さんは頂くから」


冗談っぽく大翔君に告げると、先輩はまどかさんを優しく包んだ。


安らぎに包まれたような表情のまどかさんを、先輩はすごく愛おしそうに抱きしめていて。

何だか、胸の中に温かいものが込み上げてくる。


「大事に…してあげて下さい。大切な母親ですから」


そう答える大翔君も、凄く素敵な笑顔を浮かべていて。

肩の荷が下りたといった感じで、嬉しそうだった。


この笑顔が…水沢の言っていた笑顔なのかもしれない。
< 316 / 337 >

この作品をシェア

pagetop