揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「彼女、親父さんが転勤の多い人でさ。結局、うちの中学にも一ヶ月ぐらいしかいられなくて。今頃は…ドイツにいるんじゃないかな?」


「そう…なんだ」


淡々と話してはいるけれど、やっぱり真吾はどこか淋しそうで。

きっと、まだその人の事を忘れられないんじゃないのかな。


「遠距離もいいところだから、最後はその子に別れを告げられたんだ。たぶん、俺の事を思って言ってくれたんだろうけど」


「でも、別れなくても良かったんじゃない?」


遠距離でもカレカノでいたいって私は思っちゃうんだけど。

それはやっぱり、甘いのかな?


「遠距離でも続いていけたら一番いいだろうけど。でも、やっぱり不安になるんじゃないかな。相手が自分を想い続けてくれるのか不安になって、自分も相手を想い続けられるか不安になって。どうしても、そばにある安らぎを求めてしまうと思うから」


真吾の言ってるのは、きっと正論で。

私のは…現実を分かってない理想論にすぎないんだろう。


でも、もし本当に大翔君がニューヨークに行っていたとしたら。

私は…どうしていたんだろうか?


「大翔君もニューヨークに行くと決めた時は、かなり勇気が要ったと思うよ。好きな人の為に自分が犠牲になろうとするなんて、大人でもなかなかできないだろうし」


どうして大翔君が私と別れてニューヨークに行こうとしたのかは、あの後に真吾から聞いて初めて知った。

まどかさんに、私の家族を転勤させるって脅されていたからなんだって事を。


「ホント。どっちが年上なんだか、ますます分からなくなっちゃう」


いつも守られてばかりだから。

5つも下なんだっていうことを、つい忘れそうになってしまう。
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