揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「……ありがとう、拒まないでくれて」


どれぐらいの時が流れたのだろうか。

時計の針で確認したら、きっと大した時間じゃないのかもしれない。


「友達でいるって決めてからも、ずっとどこかで由佳を諦めきれずにいたんだ。でも、こうして2人の問題が解決した今。俺もちゃんと踏ん切りつけなきゃって思ったら…どうしても最後に触れておきたくてさ」


そう言って、ゆっくりと真吾は私から腕を離していって。

完全に体が離れた時には、凄く穏やかな表情を私に向けてくれていた。


「ごめんね」


とりあえず、そう謝るしか私にはできなくて。

助けてもらってばかりの真吾に申し訳なくて、頭を下げた。


「由佳のせいじゃないよ。っていうか、いきなり抱きしめたのは俺なんだから、俺が謝らなきゃ」


そう言って笑う彼は、いつもの優しい王子キャラに戻っていた。


きっと、彼を好きな人は凄くたくさんいて。

その中には、元カノの存在を忘れさせてくれる人がいるかもしれない。


今の私にできるのは、真吾が早く次の恋に進めるようにと祈る事だけだった。


「諒斗も心配してたから、俺から連絡しておくよ」


駅舎が視界に入って来た頃。

真吾はそう言って、ズボンのポケットに入っていた黒い携帯をチラッと私に見せた。


「うん、ありがとう」


「もう、ここでいいよ。じゃあ、また明日」


改札が近くなると、真吾はそう言って私を言葉で制し。

そのまま、こっちに背中を向けて切符を買いに向かった。
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