揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「真吾っ」


改札を入る人と出る人と。

大勢の人達が行き交う駅にあって、真吾の姿が埋もれてしまいそうで。


私は、慌てて彼の背中に向かって声を掛けた。


「また、明日ねっ」


私達はこれで終わりじゃない。

また明日学校で会ったら、今までみたいに友達として話はできるよね?


「また明日」


切符を買い終えた真吾は、そう言って私を振り返ってくれた。

こんな時、彼が背が高くて本当に良かったと思う。


「気を付けてねっ」


私の声に笑顔で手を振り返しながら、彼は改札をくぐる人並みに飲み込まれるように遠ざかって行った。


真吾の姿が見えなくなるのを確認すると、私は自分の家に向かって歩き始めた。

そのうちに、今日はまだ見ていなかった小学校が視界に入ってきた。


もちろん、こんな時間にグランドには誰もいない。

校舎も一か所を覗いては灯りが無いから、たぶんあそこが職員室なんだろう。


早くケガが治って野球やれるといいね。


頭の中のグランドに、ユニフォーム姿の大翔君を思い浮かべる。

克也や公輝君達と楽しそうに練習する彼は、小学生らしい笑顔を浮かべていて。


自然と…自分の顔も笑顔になっていた。


「さて、と。私も早く帰って報告しなくちゃね」


もう少し眺めていたい気持ちを抑え、私は家路を急いだ。
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