揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「姉ちゃん、大変大変っ」


私が玄関を開けるなり、克也が大きな足音を立てて駆けつけて来て。

その顔付きが珍しく真剣で、言葉通り大変な事態が起こったのではと咄嗟に身構えてしまった。


「な、何?」


「聞いて驚くなよ?篠原さんが、ホントは記憶戻ってたらしいんだよっ」


大スクープを持ちこんで来た雑誌記者の如く、大げさなドヤ顔を向けてくるものの。

情報が古いんだよ、克也君……。


「知ってるよ」


「えっ?えぇっっっ!?」


そんなに叫ばなくてもいいだろうに、克也のバカでかい声が玄関に響き渡り。

何事かと、リビングからお母さんが慌てて出てきた。


「ちょっと、どうしたのよ?」


「あぁ、何でもないから」


半ば放心状態の克也をその場に放置し、私は夕御飯を食べようとリビングへと足を運んだ。

そんな私の言葉に小首を傾げつつ、お母さんも後をついて来る。


「由佳、ちょっと話いい?」


鞄をソファに置くと、キッチンへと足を運びながらお母さんがそう尋ねてきて。

改めてそう言われると何だか緊張するものの、特に断る理由も見つからないので「いいよ」と答えた。
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