揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「父さんとも、いろいろデートしたの?」


まどかさんに初めて会ったのは、俺が1年の時。


会社の部下だという彼女を紹介されたのは。

くしくも、本当の母さんの葬儀の日だった。


「そうねぇ、いろいろ連れて行ってもらったけど……」


裸体を布団に包んだ彼女は、思い出したようにニヤッと笑みを漏らした。


『悪女』


そんな言葉を、ふと連想させられる。


「別に、あなたのお父さんの事を好きだったわけじゃないから。デートなんて、しなくてもよかったんだけどね」


彼女のその無情な言葉に。

俺は、父さんの姿を思い出していた。


本当の母さんといた時ほどじゃないにしても。

まどかさんといた時の父さんも、俺には十分幸せそうに見えた。


父さんとまどかさんと、俺。

それなりに、幸せな家庭だったと思っていたのに。


あの時の彼女の笑顔が偽りだったなんて、今でも信じられない。


母さんが死んで、しばらく沈んでしまっていた父さん。

そんな父さんに笑顔を取り戻してくれたのが、まどかさんだった。


一回りも下の奥さんをもらった父さんは、もう一度家族の為に頑張ると言ってくれていたのに……。


「父さんが死んで、嬉しかった?」


ずっと、訊くのが怖かった言葉。
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