揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「ほんっと、ころころ表情変わって面白いよね」


そう言って大翔君は、向かい合って座っている私の頬を泡の付いた指でツンッとつついてきた。

ローズのいい香りが、鼻のすぐそばから漂ってくる。


「そういえばさ、俺も訊きたい事あったんだよね」


そう言いながら、彼はじわりじわりと私との距離を縮めてきて。

何か胸騒ぎのする私は、ゆっくりと湯船の端まで後ずさりしていった。


「な、何?」


咄嗟に心当たりを探すものの、焦っていてちゃんと思い出せなくて。

とりあえず冷や汗を感じつつ、私は引きつった笑顔を彼に向けていた。


「あのオッサン、俺に変な事言ったんだよ。『もうちょっとで、あっちも親子どんぶりになるところだった』って」


「親子どんぶり?」


いきなりそんな話されても、全然意味が分からなくて。

親子丼と私と何の関係があるっていうの?


「……食い物じゃないからね、言っとくけど」


「はっ?だって丼なんて食べ物じゃない。それともニワトリの事?」


「ほんっと、天然っていうか、純粋っていうか」


そんな言葉を溜息混じりに吐き出し。

大翔君は、いきなり私の唇にキスを落としてきた。


チュッというリップ音と共に唇を離した彼は。

不意打ちのキスにとろんとしている私のおでこに、自分のおでこをくっつけてきた。
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