揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「あなたのお父さんには悪いけど、正直嬉しかったわ」


悪びれる事無く、彼女はあっさりとそう答えた。


やっぱり……。


訊かなきゃ良かったと後悔しつつも、本音が分かったのは収穫だった。


「だって、誰にも邪魔されずに大翔と2人でいられるじゃない」


そう言って俺の左の頬を、白くて長い指で触れてくる。

だけど、その仕草に対して俺は何も感じない。


ドキッとするとか、性欲が湧くとか。


とりあえず、彼女の言葉を頭の中で繰り返していた。


どこまで本気なのか分からないけれど。

父さんが死んだ事を、彼女は嬉しかったと俺に告げた。


本来なら、俺は彼女を憎んでもいいのかもしれない。


「嫌いになった?」


それは、決して不安から尋ねる意のモノじゃない。

俺の答えを分かった上で、挑発的に誘うための言葉。


「……ならないよ。だって、俺もまどかさんと2人でいたいし」


気持ちのこもっていない言葉を並べ、頬に触れている彼女の手をぐっと掴んだ。

そのまま引き寄せて、もう一度深く口づけを交わす。


「んふっ…はぁっ……」


こんな愛のないキスの、どこが嬉しいのか分からない。

気持ちの入っていない言葉を、どうして喜べるのか分からない。


俺の気持ちがまどかさんに無いことぐらい、知っているはずなのに……。
< 34 / 337 >

この作品をシェア

pagetop