揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「やだっ、悠也(ゆうや)?」


振り返ってその声の主を見た時のまどかさんは。

俺の知らない…女性の顔をしていた。


可愛らしい笑顔を、その男に惜しみなく向けている。


「偶然だな、こんなトコで」


背が高い、まどかさんぐらいの年の少しチャラそうな男。

顔はカッコイイし、何かスポーツをやってそうな肉付きをしている。


まぁ、世間一般で言う『イイ男』なんだろう。


そのイイ男の視線が、彼女から俺へとスライドされた。

値踏みするかのように、ジロジロと上から下まで見てくる。


「ホントに母親やってんだなぁ」


「そうよ。イイ男でしょ?ウチの息子」


そう言うと、彼女は俺の右肩に手を置いてきた。

仕方なく、俺は彼に頭を下げる。


「確かに、将来有望って感じだな。アイドルにでもなれんじゃねぇの?」


調子のいいお世辞に、歯が浮いてしまいそうだった。

引きつった笑顔しか返せない。


「アイドルになんてさせないわよ。大事な息子だもん」


「はいはい。また、今度お茶でもしよ?メールするよ」


そう言うと、彼はそのまま俺達の横を通り過ぎて行った。

まどかさんは可愛らしい笑顔を浮かべたまま、彼の後ろ姿を見送っている。
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