揺れる想い~年下彼氏は小学生~㊦
「それよりさ……」


少し真面目な顔つきで、克也が話し始め。

軽い胸騒ぎを感じつつ、俺は黙って次の言葉を待っていた。


「姉ちゃんの事、あんま…悲しませんなよ」


真っ直ぐに、克也は俺を見ている。


コイツは、ホントに姉思いのいい奴だから。

きっと、一昨日の俺のメールの事を言ってるんだろう。


「由佳…泣いてたのか?」


尋ねる声が、思わず震えてしまう。

大切な人を俺自身が悲しませてるって事が、なんだか無性に心苦しくて仕方ない。


由佳の涙を見たくないと思う俺が、彼女を泣かせてしまってるのか……?


「お前の事を信用してるから、俺は協力したんだけど。なのに、何だよ?あのメール」


いつもは幼い感じの、女子曰く『子犬のような克也君』だけど。

今のコイツは、違っていた。


大切な姉を守ろうとする、≪男≫の顔をしている。


「何って、あのままだよ。昨日は用ができたし、次に連絡できそうなのが修学旅行帰ってからだったから」


ホントは、克也の目を見るのがたまらなく辛かった。


偽りの心を見抜かれてしまいそうで。

アイツの純粋で真っ直ぐな目を見るのが、今の俺には怖かったんだ。
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